目次
はじめに
ビルメンテナンス業界は、日本経済を支える重要な存在です。オフィスビル、商業施設、ホテル、マンションなど、私たちの生活に欠かせない建物の維持管理を担っています。しかし、この業界は少子高齢化や人手不足などの課題に直面しており、その解決が求められています。本記事では、ビルメンテナンス業界の現状と課題、そして今後の展望について詳しく見ていきます。
●ビルメンテナンス業界の現状
ビルメンテナンス業界は、清掃管理業務、衛生管理業務、設備管理業務、管理サービス業務、保安管理業務等、業務も多岐にわたっております。建物の維持管理や修繕、リニューアル工事などを行う重要な分野で市場規模は4兆円を超えると見られており、今後も安定した需要が続くと予測されています。
〇需要の背景
ビルメンテナンス業界の需要は、主に以下の要因から生まれています。
- オフィスビルや商業施設、マンションの増加
- 高度経済成長期に建設された建物の老朽化
- 個人の防災意識の高まり
- 住宅の長寿命化への取り組み
これらの要因から、建物の維持管理や改修需要が高まっており、ビルメンテナンス業界の成長を下支えしています。
〇主要プレイヤー
ビルメンテナンス業界には、大手企業が多数存在しています。代表的な企業としては、イオンディライト、東急不動産HD、日本管財 などが挙げられます。これらの企業はビル管理やセキュリティ、設備保守などの幅広いサービスを提供しています。
また、中小企業も重要な役割を果たしており、地域密着型のサービスを展開しています。今後は中小企業同士のM&Aが進むことで、企業基盤の強化が図られると予想されます。
●ビルメンテナンス業界の課題
一方で、ビルメンテナンス業界は人手不足や資源高、競争激化など、さまざまな課題に直面しています。
〇人手不足
ビルメンテナンス業界は労働集約型の業種の為、最大の課題は人手不足です。若年層やマネジメント層の確保が難しく、外国人技能実習生の受け入れや、清掃ロボットや警備ロボットの活用が検討されています
将来的には人はロボットの管理や緊急対応などがメインの業務になってくるでしょう。
人材確保のためには、処遇改善や働き方改革、資格取得支援など、さまざまな取り組みが必要となります。
〇資源高とコスト上昇
ビルメンテナンス業界だけではありませんが、資源価格、人件費高騰が大きな課題となっています。このため、省エネ対策や業務の効率化が求められています。
資源 | 価格変動率 |
---|---|
石油 | +30% |
鉄鋼 | +20% |
非鉄金属 | +15% |
上記のように、資源価格の変動は大きく、企業にとって大きな負担となっています。
〇競争の激化
ビルメンテナンス業界では、大手企業と中小企業の競争が激しくなっています。大手企業はM&Aを通じて事業基盤を拡大する一方、中小企業は専門性や地域密着型のサービスで対抗しています。
競争が激しくなれば、価格競争に陥るリスクがあります。このため、技術力の向上や付加価値の提供が重要となってきます。
●ビルメンテナンス業界の展望
ビルメンテナンス業界は、さまざまな課題に直面していますが、その解決策も示されています。今後の展望をいくつかの観点から見ていきましょう。
〇DX化の進展
ビルメンテナンス業界では、DX化が急速に進んでいます。IoTセンサーやAI、ドローン、ロボット技術の活用により、業務の効率化と省力化が図られています。
例えば、設備の点検はドローンで行い、清掃はロボットが担当するようになるでしょう。また、BIMの導入により、建物の維持管理情報を3次元モデルで一元管理できるようになります。
DX化の進展は、人手不足の解消と省エネ、SDGsへの対応にも役立ちます。ただし、既存ビルへの導入には多額の投資が必要となるため、課題も残されています。
〇外国人労働者の活用
人手不足への対策として外国人労働者の活用が進められています。技能実習生の受け入れに加え、特定技能制度の活用も検討されています。
外国人労働者の活用は、人手不足の解消に寄与しますが、言語や文化の違いへの対応が課題となります。外国人労働者の技術研修や、現場でのサポート体制の整備が重要になってくるので受け入れる企業側も受け入れる準備をする必要があります。
〇海外展開の加速
ビルメンテナンス業界では、上位10社を中心に海外進出が加速しています。中国やASEAN諸国では、建設需要が高く、ビルメンテナンスの技術・ノウハウが不足しているためです。
2020年のベトナムでのビルメンテナンス市場規模は500億円とも言われています。
海外展開により、新たな事業機会が生まれまれ一方で、現地の法制度や文化への対応、現地スタッフの育成など、さまざまな課題にも直面することになります。グローバル人材の確保が重要な鍵を握ります。
◇まとめ
ビルメンテナンス業界は、人口減少や人手不足、資源高騰など、さまざまな課題に直面しています。しかし、DX化の推進、外国人労働者の活用、海外展開など、具体的な対策も示されています。
今後、ビルメンテナンス業界はこれらの取り組みを通じて、持続的な成長を実現していくことが期待されます。建物の快適性と安全性を支える重要な役割を担う業界として、社会インフラを支える存在であり続けることでしょう。