消防設備業者やビル管理会社にとって、「防火管理者選任届」や「消防用設備等設置届」など、消防署への届出は日常的な業務の一部になっています。
しかし、2025年2月25日付で総務省消防庁から出された通知により、この日常業務の一部が法律違反の可能性を含むことが明確に指摘されました。
届出って、これまで普通に代行していたけど
行政書士じゃないと提出できないって本当?
今回は、この通知の内容・背景・法的根拠、そして無償での届出作成が問題になるケースまでを、わかりやすく整理してお伝えします。
目次
🔍今回の通知とは?
- 通知名:消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について
- 発出日:令和7年(2025年)2月25日
- 発出者:総務省消防庁 予防課長
- 宛先:全国の消防主管部局・消防本部
📎 通知原文PDF(消防庁公式サイト):消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について(PDF)
この通知は、消防署に提出する各種届出を行政書士資格のない者が報酬を得て作成・提出している事例が全国的に見られることから、行政書士法の遵守を徹底するよう求めるものです。
🏛️行政書士法と届出業務の関係
行政書士法(第1条の2・第1条の3)では、次のように規定されています。
- 報酬を得て
- 他人の依頼を受け
- 官公署に提出する書類を作成・提出する
これらは行政書士の独占業務です。
消防関係の届出も「官公署に提出する書類」にあたるため、報酬を得て代行する場合は行政書士でなければ行えません。
📑具体的にどんな届出が対象?
消防署に提出する届出で、行政書士業務に該当する可能性があるものには、例えば以下があります。
- 防火管理者選任届出書
- 消防計画の作成・届出
- 消防用設備等設置届出書
- 防災管理者選任届出書
自社物件であれば自分で提出可能ですが、顧客の物件について報酬を得て作成・提出する場合は、行政書士でなければ違法となる恐れがあります。
ただし、消防用設備等着工届出書では「甲種消防設備士」が担当する必要があります。
法的には建物関係者が届出義務者ですが、多くの自治体では実務運用として甲種消防設備士が届出者として想定されています。
💬なぜ今、通知が出たのか?
今回の通知は突然の規制強化ではなく、以前から存在した行政書士法の規定を改めて現場に徹底するためのものです。
背景としては、
- 消防設備業者や管理会社による届出代行が全国で日常的に行われていた
- 行政書士会などから「これは無資格業務だ」との指摘
- 総務省消防庁が各消防本部に対応の引き締めを求めた
といった流れがあります。
つまり、法改正ではなく運用の明確化といえます。
⚠️無償でやれば大丈夫?
結論としては、「無償ならすべてOK」とは言えません。
- 行政書士法は「報酬を得て」が要件ですが、継続的かつ反復的に無償で行う場合は「業」とみなされる可能性があります。
- これまでの公開判例では「無償提供のみを理由に違法とされた裁判例」は確認されていませんが、行政指導や是正要求の対象になることはあり得ます。
つまり、無償であっても慎重な運用が必要です。
📌実務でのOK・NG例
ケース | 可否 | 理由 |
---|---|---|
自社が施工した物件の届出を自社名で提出 | ✅ | 自社物件であり行政書士業務にあたらない |
顧客から報酬を受けて届出を作成・提出 | ❌ | 行政書士の独占業務 |
顧客から依頼され無償で一度だけ届出作成 | △ | 違法ではない可能性が高いが、継続的だとリスクあり |
行政書士と提携し、書類作成は行政書士が担当 | ✅ | 業務分担により適法 |
🧩業務上の対応策
消防設備業者・管理会社としては、以下の対応が現実的です。
- 届出代行業務の見直し
- 有償代行は原則中止し、行政書士に依頼
- 委任状と証拠の整備
- 無償で行う場合でも、委任状や「無償である」旨を記録
- 行政書士との連携
- 専門業務は行政書士に任せ、自社は技術分野に集中
✅まとめ
- 消防署への届出も、報酬を得て第三者のために作成・提出する場合は行政書士の独占業務
- 無償であっても、継続的に行えばリスクがある
- 今回の通知は、法律の適用を明確にするために出されたもので、今後は消防署側のチェックも厳しくなる可能性が高い
- 自社業務の中で届出作成がどこまで許されるかを確認し、適切に業務分担することが重要