目次
はじめに
2016年12月22日、新潟県糸魚川市で大きな火災が発生しました。場所は糸魚川駅の北側に広がる市街地。炎はおよそ30時間にわたって燃え続け、147棟もの建物に被害が出ました。この火災は「戦後最大級の都市火災」とも言われ、防災のあり方をもう一度見直すきっかけとなったのです。
▶出火のきっかけと最初の対応
火元は、大町一丁目にある飲食店。午前10時20分頃、調理中のコンロの火をうっかり消し忘れてしまったことが原因とされています。加熱が進むうちに、そばにあった可燃物に引火し、瞬く間に炎が広がっていきました。
火災に気づいた店主はすぐに119番通報。消防も迅速に駆けつけましたが、現場に到着した時にはすでに建物が炎に包まれ、周囲の建物への延焼が始まっていたのです。
🌬️強風が火をあおった日
この日は最大瞬間風速27.2m/sの強い南風が吹いており、火の粉は風に乗って数百メートル先にまで飛散しました。
これは体重60kgの人が立っていられないほどの風速で、屋外では傘が折れたり、看板が飛ぶこともあるようなレベルの強風です。
木造住宅が密集する市街地では、次々に火が燃え移り、炎は国道8号を越えて商店街や住宅街にも広がっていきました。消火ホースの凍結など冬ならではの課題も、現場をさらに厳しいものにしました。
▶被害の規模と状況
火災で全焼した建物は120棟、半焼5棟、部分焼22棟、合計147棟。焼失面積は約4万平方メートル(約30,412㎡)、東京ドームの約0.85個分にもなります。
人的被害としては、負傷者17名(消防団員含む)でしたが、幸い死者は出ませんでした。迅速な避難誘導と広報活動が功を奏した結果といえるでしょう。
🕛火災の時系列
糸魚川市の火災は、発生から鎮火までに約30時間を要しました。以下に、主な出来事を時系列でまとめます。
- 10:20頃:火災発生(大町一丁目のラーメン店)
- 10:28:消防へ通報が入る(火災覚知)
- 10:35頃:消防隊が現場に到着、初期消火開始
- 11:21頃:飛び火による新たな火点が確認される
- 12:00頃:第2の飛び火により延焼範囲が拡大、応援要請開始
- 13:00:糸魚川市および新潟県が災害対策本部を設置
- 16:00:市内一部に避難勧告発令
- 20:50:鎮圧(火の勢いが弱まり、制御可能な状態に)
- 翌日16:30:完全鎮火
この間、のべ1,000人以上の消防隊員が交代で活動し、多くの関係機関が連携して被害拡大を食い止めました。
🚒消火活動のようす
糸魚川市消防本部をはじめ、県内外あわせて19本部、のべ1,000人以上が消火活動に当たりました。延焼拡大を防ぐため、防火帯の確保、空中散水、警戒巡視などが行われました。
火災発生から約10時間で鎮圧、完全鎮火までは約30時間を要しました。
▶この火災が教えてくれた3つのこと
東京理科大学 関澤教授のレポートによると、この火災が大火にまで至った要因には3つの特徴がありました。
- 木造密集地の存在:火元の周囲は古くからの木造建築が密集しており、家屋同士に隙間がなく延焼を止められなかった。
- 強風と飛び火:風によって火が煽られ、道を越えて向かいの建物にまで届く火炎、そして飛び火による複数の新たな火点が発生。
- 小規模消防の限界:初期段階では地元消防のみで対応。応援部隊到着までに多くの時間を要し、その間に火勢が拡大。
この3つの要因が重なり、火災は一気に広範囲へと広がったのです。
👨🏼⚖️制度の見直し
この糸魚川市の火災をきっかけに、消防関連の制度にも見直しが入りました。特に、出火元が小規模な飲食店だったことから、小規模店舗に対する防火設備の義務化が強化されることとなりました。
2019年10月1日の消防法施行令の改正により、それまで延べ面積150㎡未満の飲食店などには義務付けられていなかった消火器の設置が、新たに義務化されました。これにより、火気を使用するすべての飲食店は、面積に関わらず消火器の設置が求められるようになり、初期消火体制の強化が図られました。
さらに、防火管理者の選任対象となる用途や基準の見直しも行われ、従業員や利用者が少数であっても、防火体制が確実に整うような仕組みづくりが進められています。
🚨さいごに
火災はいつ、どこで、誰の身に降りかかるかわかりません。糸魚川のような大規模火災も、たったひとつの小さな「うっかり」から始まりました。しかしその一方で、正しい備えがあれば、被害は最小限にとどめることもできる──それが今回の火災が私たちに残した大きな教訓です。
私たちは、命と暮らしを守るための「備え」をご提案します。
消防設備の点検・整備は、まさにその第一歩です。
安心・安全なまちづくりのために、まずは一度ご相談ください。
あなたの建物を、次の火災から守るために──
私たちも、皆さまの防災を全力でサポートいたします。