― 事故調査・中間報告をもとに、わかりやすく解説 ―
2025年8月、大阪・ミナミの繁華街で発生した道頓堀ビル火災。
この火災では、消火活動にあたっていた消防職員2名が殉職するという、非常に痛ましい結果となりました。
本記事では、大阪市消防局の事故調査委員会が公表した中間報告(概要)をもとに、
「何が起き、なぜ被害が拡大し、どんな課題が見えてきたのか」を解説します。
目次
第1 事案概要について
・事故の概要
この火災は、大阪市中央区宗右衛門町にある田舎そばビル・イナカ会館で発生しました。
消防隊が消火活動を行う中で、建物内に取り残された消防職員2名が行方不明となり、その後殉職が確認されました。
繁華街という立地、建物の構造、火災の進み方などが重なり、
消防活動が非常に困難な状況に陥った事故です。
・火災の概要
- 発生日時:2025年8月18日 午前9時45分ごろ
- 通報:近隣店舗の従業員から「1階が燃えている」と通報
- 建物:地下1階・地上7階建ての複合用途ビル
火は建物の外側から上へと広がり、最終的には5階・6階の室内まで延焼しました。
消防職員のほか、一般の利用客1名も負傷しています。
複合用途ビルとは1階に飲食店、2階に事務所といったように様々な業種の
用途が入っている建物のことで、通称「雑居ビル」とも呼ばれているぞ
第2 発災建物について

・発災建物の概要
火災が起きた建物は、飲食店や事務所が入る雑居ビルでした。
主な特徴は以下のとおりです。
- 昭和40年代に建てられた古い建物
- 東側と西側、2棟が途中階でつながっている構造
- 外壁に多数の屋外看板が設置されていた
- 一部の看板は「不燃材料」ではなかった
- 5階は間仕切りが多く、内部構造が非常に複雑
特に、看板の素材や取り付け方、複雑な室内構造が、火災の拡大や消防活動の難しさにつながったとされています。
中間報告書によると屋外看板だけど一部は不燃材料でなかったりと
規定どおりとは言えず、問題があった可能性が高いと言われているんだ
第3 火災の状況について

・火災の進展
火災は、建物の敷地内地上部分から発生しました。
その後、
- 雑品やエアコン室外機が燃える
- 外壁に設置された屋外看板へ燃え移る
- 看板を伝って火が一気に上方向へ拡大
- 隣の建物5階の窓やエアコンを破壊し、室内へ侵入
という流れで進みました。
5階の室内では、いったん火が弱まったあと、
扉が開いたことで新鮮な空気が一気に入り、爆発的な燃焼(バックドラフト)が発生。
この炎と煙が、室内階段を通って6階まで一気に広がりました。
バックドラフト現象とは、火災で酸素が欠乏した密閉空間に
新鮮な空気が流れ込んだ際、残っていた可燃性ガスが一気に燃焼する爆発現象です。
第4 消防隊の活動について
・活動概要

消防隊は通報から約7分後に現場へ到着し、建物内へ進入しました。
当初は火が見えにくく、
- 4階までは異常なし
- 5階・6階で火災が進行している情報を入手
という状況でした。
6階で消火活動中、5階の扉が開放されたことをきっかけにバックドラフトが発生。
瞬時に6階が高温・濃煙状態となり、
小隊長と隊員1名が取り残される事態となりました。
その後、複数の隊が懸命に捜索を行い、
約2時間後に2名を発見・救出しています。
第5 事故原因について

・原因分析
中間報告では、事故の原因を一つに断定できない「複合的要因」としています。
主なポイントは次の3つです。
① 火災が想定以上の速さで拡大した
- 不燃でない屋外看板
- エアコン室外機の燃焼
- 建物と看板のすき間構造
これらが重なり、火が外壁を伝って一気に上階へ広がりました。
② 退路が断たれた
バックドラフトにより、
- 階段が使えなくなった
- 高温と煙で視界と行動力を奪われた
結果として、脱出が不可能な状況になりました。
③ 発見・救出に時間を要した
- 建物構造が複雑
- 情報共有が追いつかなかった
- 煙と熱で進入が困難
これらの要因により、救出まで長時間を要しました。
おわりに
この事故は、
「建物の構造」「外壁の設備」「火災時の想定」が少しずつ重なり、
取り返しのつかない結果につながった火災でした。
中間報告では、今後に向けて
- 建物側の予防対策
- 消防活動の安全確保
- 情報共有や危険予測の強化
といった再発防止策を検討していくとしています。
私たち一般の立場でも、
「古いビルの外壁看板は安全か」
「非常時に火がどう広がるか」
を考えるきっかけとして、決して他人事ではない事故と言えるでしょう。