👉はじめに
工場や駐車場、危険物施設などで多く採用されてきた泡消火設備。油火災や可燃性液体火災に効果を発揮する重要な消防設備ですが、近年「PFOS(ピーフォス)を含む泡消火薬剤」が大きな問題となっています。
PFOSは「ペルフルオロオクタンスルホン酸」という化学物質で、かつては泡消火薬剤に広く使用されてきました。しかし、環境中で分解されにくい性質があり、世界的に規制対象となったことで、日本でも消防庁が点検基準を改正しました。
この記事では、点検業者と管理会社の立場から押さえておくべき改正内容と実務上の注意点を整理します。
📌PFOS規制の背景
2009年、国際条約である「ストックホルム条約(POPs条約)」において、PFOSは残留性有機汚染物質に指定されました。これにより日本でも化学物質審査規制法(化審法)に基づき第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が禁止となりました。
ただし泡消火薬剤については、既に設置されている設備での使用は一定条件下で認められてきました。そこで消防庁は2010年に「点検基準」を改正し、点検事業者や管理会社に向けて具体的な運用指針を示しました。
✅点検基準改正のポイント
今回の通知で押さえておくべき改正点は以下のとおりです。
- 泡放射によらない点検の容認
本来、総合点検では泡を実際に放射して「発泡倍率・混合率・放射圧力」を確認する必要があります。
しかしPFOS含有薬剤は環境放出が問題となるため、一定の措置(薬剤の機能確認を行っていることなど)が講じられている場合は、泡を実際に放射せずに代替的な確認を行うことが認められました。 - 点検票への記載義務
泡放射を省略する場合は、点検票の備考欄に以下を記載し、証明資料を添付する必要があります。- 「PFOS含有薬剤を使用している」旨
- 薬剤の型式番号
- 薬剤の機能維持が確認できる資料(例:サンプリング試験結果など)
- PFOS薬剤の在庫切れ問題
製造・輸入は禁止されているため、今ある在庫がなくなると同じ薬剤での補充は不可能となります。
その際は他薬剤との混合使用が必要になりますが、これは消防庁の別通知に基づいて慎重に対応する必要があります。 - 薬剤放出時の回収義務
点検でやむを得ずPFOSを放出した場合は、化審法に従って必ず回収・密閉容器で保管しなければなりません。薬剤や拭き取り布も含め、産業廃棄物として適切に処理することが求められます。
⚠️実務での留意点(点検業者向け)
点検業者が現場で注意すべき具体的なポイントは次のとおりです。
- 泡放射を避ける場合は、消火薬剤の機能確認を3年以内に実施しているか、薬剤交換から10年(合成界面活性剤は15年)以内であるかを確認すること。
- 点検報告書には必ず「PFOS使用」「型式番号」「証明資料」を添付する。
- 泡を放射した場合は、薬剤や拭き取り布まで回収し、密閉容器に保管。処理方法も含めて記録を残す。
- 混合薬剤の補充を行う場合は、メーカー通知や消防庁通知を確認し、誤った補充を行わない。
⚠️実務での留意点(管理会社向け)
管理会社としては、以下の点を押さえておく必要があります。
- 所有建物にPFOS含有薬剤が使用されているかを把握すること。点検業者からの報告を受け、更新時期や交換計画を検討。
- PFOS薬剤は将来的に補充困難となるため、早めのPFOSフリー薬剤への切替えを計画する。
- 点検でPFOSを放出した場合、回収・保管・処理の責任が所有者側にも及ぶため、廃棄手続きまで含めて業者と連携する。
- 消防署からの立入検査の際に備え、点検報告書や薬剤管理資料を整理しておく。
💡今後の方向性
消防庁も通知の最後で「PFOSを含まない泡薬剤への切替えが望ましい」と明言しています。
つまり、点検や補充を繰り返してPFOSを使い続けるのではなく、計画的に更新していくことが最も現実的かつ安全な対応策です。
点検業者は「環境に配慮した点検方法」を、管理会社は「将来的な更新計画」をそれぞれ意識しながら、PFOS問題に対応していく必要があります。
🔹まとめ
- PFOSは環境に残留する化学物質であり、国際的に規制された。
- 消防庁の点検基準改正により、PFOS薬剤を使用する泡消火設備の点検は特別な対応が求められる。
- 点検業者は回収・記録・報告を徹底、管理会社は更新計画と資料管理を強化することが重要。
- 将来的にはPFOSフリーの泡消火薬剤への移行が不可欠。
消防設備点検の現場では、単なる「法令遵守」にとどまらず、環境保全や持続可能性への配慮が求められています。今回の改正をきっかけに、業界全体でPFOS問題に向き合っていくことが大切です。