目次
はじめに
南海トラフ地震は日本列島に甚大な被害をもたらす可能性のある、非常に危険な巨大地震です。最悪のシナリオでは、死者数が32万人を超え、経済被害は220兆円に達すると予測されています。このような深刻な事態を回避するために、国や自治体、企業などが連携して、さまざまな防災対策に取り組んでいます。本ブログでは、南海トラフ地震の脅威と備えについて、詳しく解説していきます。
●南海トラフ地震の脅威
南海トラフ地震は、日本列島太平洋側を走るプレート境界で発生する巨大地震です。過去には、1707年宝永地震、1854年安政東海地震、1944年東南海地震、1946年南海地震など、大規模な被害をもたらした事例があります。
○想定される被害
内閣府によると、最大クラスの南海トラフ地震が発生した場合、震度7の激しい揺れが静岡県から宮崎県にかけての一部で想定され
隣接する広い地域でも震度6強から6弱の強い揺れが予想されています。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に、10mを超える大津波の襲来が危惧されています。
このような地震や津波によって、建物の倒壊や火災、ライフラインの寸断、交通機関の途絶など、様々な被害が想定されています。
特に、高層ビルへの長周期地震動による被害や、津波の「縮流」現象による局所的な高い津波の発生なども懸念されています。
縮流(しゅくりゅう)とは、大都市など建物が密集してるとこで津波の威力が増大してしまう現象のことを言います。
○過去の教訓
東日本大震災では、高齢者の避難が困難だったことや、長期にわたる避難生活への対応が遅れたことなど、多くの課題が浮き彫りになりました。
また、データの保護や仮設住宅の確保など、様々な課題に直面しました。南海トラフ地震に備えるには、こうした教訓を踏まえた対策が不可欠です。
地震名 | 発生年 | 死者数 |
---|---|---|
宝永地震 | 1707年 | 約3万人 |
安政東海地震 | 1854年 | 約3,000人 |
東南海地震 | 1944年 | 約1,200人 |
南海地震 | 1946年 | 約1,400人 |
過去の南海トラフ地震では、多くの尊い命が奪われました。南海トラフ地震に備えるには、この教訓を忘れずに、被害を最小限に抑えるための対策が重要です。
●事前の備え
南海トラフ地震への備えは、発災前の事前対策が極めて重要になります。自分の住む地域のリスクを正しく把握し、避難計画を立てるなどの準備が求められます。
○リスク把握
政府の地震調査委員会が公表した予測地図を見れば、自分の住む地域がどの程度の強い揺れに襲われるリスクがあるかが分かります。
最新の被害想定を確認し、避難経路や避難場所を事前に確認しておくことが重要です。
- 住宅の耐震性能確認
- 家具の転倒防止対策
- 非常持ち出し品の準備
- 避難場所や経路の確認
こうした備えは、いざというときの被害を大幅に軽減する可能性があります。自治体が作成したハザードマップも、リスク把握の大きな助けになります。
○地域との連携
南海トラフ地震に備えるには、自治体や地域コミュニティとの連携が欠かせません。
自治体が実施する防災訓練や防災講習会に参加し、地域の防災力向上に協力することが重要です。
また、近隣住民と避難計画を共有するなどの取り組みも有効でしょう。
企業においても、従業員の安全確保と事業継続のための備えが求められます。BCPの策定やリスク分散など、さまざまな対策が必要不可欠です。
BCPとは「事業継続計画」の略称で災害によって事業が中断しないように
計画を立てておく取り組みのことです。
●行政による取り組み
国や自治体は、南海トラフ地震による被害の軽減に向けて、様々な対策に取り組んでいます。特に重点的に推進されているのが、人命を守るための津波避難対策です。
○南海トラフ地震防災対策推進法
2013年に施行された「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」は、南海トラフ地震への備えを総合的に推進することを目的としています。
同法に基づき、「南海トラフ地震防災対策推進地域」と「津波避難対策特別強化地域」が指定されました。
推進地域内で、一定の施設や事業を運営する事業者は、津波対策を含む「南海トラフ地震防災対策計画」または「防災規程」の作成と届出が義務付けられています。
この計画により、津波からの円滑な避難や防災訓練、教育・広報などの対策が進められます。
○防災対策推進基本計画
政府の「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」では、概ね10年間で死者数を8割減、建物被害を5割減という数値目標が掲げられています。
具体的な取り組みとして、以下のような施策が定められています。
- 緊急輸送ルートの事前設定
- 警察・消防・自衛隊の迅速な救助・消火活動
- 全国からの医療チームの派遣による医療体制確保
- 津波対策
- ボランティアとの連携
これらの対策により、発災直後から効果的な応急対応が可能となり、被害の拡大を最小限に抑えることができます。
その他にも建物の耐震化や火災対策のため住宅用消火器や
感震ブレーカーの普及などに取り組んでいます。
●事業者への義務付け
南海トラフ地震への備えでは、事業者への義務付けも重要な柱となっています。
一定の事業者には、防災対策計画の作成と届出が求められています。
○対象となる事業者
南海トラフ地震防災対策推進地域内で、水深30cm以上の浸水が想定される区域において、以下の施設や事業を管理・運営する者が対象となります。
- 病院や介護施設など人の生命に関わる施設
- 危険物の貯蔵・取扱いを行う施設
- 一定規模以上の事業所
- 公衆浴場や旅館など不特定多数の者が利用する施設
これらの事業者は、津波に対する安全対策を計画的に進める必要があります。
○計画の内容
作成が義務付けられている計画には、以下のような事項を定める必要があります。
- 津波からの円滑な避難の確保
- 時間差で発生する津波への対応
- 防災訓練
- 地震防災教育や広報
既に消防計画などを持っている事業者は、その中に「南海トラフ地震防災規程」を定めることで対応できます。
計画の作成や変更には、自治体のガイドラインを参考にすることが求められています。
○義務化の意義
このような計画作成の義務化は、事業者の自主的な取り組みを後押しするとともに、地域全体の防災力向上にも貢献します。
計画に基づいて、事業者ごとの適切な防災対策が進められ、災害発生時の被害軽減が期待できます。
また、地域と事業者が一体となって防災対策に取り組むことで、より実効性の高い備えが可能になります。
事業者への義務付けは、南海トラフ地震への総合的な防災対策の重要な柱といえるでしょう。
★まとめ
南海トラフ地震は、日本列島に甚大な被害をもたらす危険性がある巨大地震です。
国や自治体、事業者が連携して、さまざまな防災対策に取り組んでいます。事前の備えと適切な対応が重要であり、一人ひとりの意識と行動が求められています。
本ブログでは、南海トラフ地震の脅威と、それに向けた多角的な対策について解説しました。この危機に立ち向かうために必要な備えを、皆さんもぜひ心がけていただきたいと思います。
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